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主にミネルヴァ書房の本が好きでよく読んでいます

コリアー 『最低辺の10億人』 5 貧困の罠との戦い方

続きです

http://naganaga5.hatenablog.com/entry/2014/03/13/224012

 

最底辺の10億人

最底辺の10億人

 

 

  • 第5部 最低辺の10億人の国にとっての戦い

 

  • 第11章 われわれの行動の指指

 

 10億人の人々はこうした世界に閉込められ続けるかもしれない。再び回避可能な大惨事へ迷いこむのを阻止するのは、すべての市民の責任である。

 そしてそれは避ける事ができる。そのための四つの方法を論じた。援助、安全保障、法と憲章、そして貿易である。

 

 もう一度罠を見直し、私達が手に持つどの手段で罠を打ち破ることができるかを考えてみよう。

 

 紛争の罠を打破する

 

 紛争の罠には二種類の介入の仕方がある。それは紛争後の介入と、強力な紛争の防止策である。

 すべての内戦のおよそ半分が紛争後に再発しており、しかもこれが起こっているのは数カ国に限定されているため、紛争後の介入の効果を高めるという点から始めるのは有効だ。

 援助は急いで一気に実施するよりも、10年程度かけて段階的に行うほうが役に立つと援助側は気づいてきた。

 紛争後の初期に圧倒的に必要なものは、政府の無能力によって阻まれる。

 これを解決する方法は、独立サービス機関モデルを通して基本的な社会サービスを提供することである。

 紛争後の国における治安維持には、長期に渡る外国軍の駐留が必要になる。

 外国軍の駐留がおよそ10年に及ぶことを覚悟して、それにコミットしなければならない。

 情勢が悪化する状況では、性急に新しい要求をするよりも、国際的規範を適用するほうが、はるかに受け入れやすいだろう。

 さらに援助国や国際機関が問題ごとに提携するよりは、あらかじめ合意している規範について協調するほうがはるかに容易である。

 このように紛争後の情勢では、四つの手段のうち三つが重要である。

 援助はすでに大きく改善されたし、軍事介入も改善されつつある(少なくともイラク以前までは)。

 しかし憲章は今のところはるかに遅れている。

 このため現在最も緊急の課題は、憲章を公布させることである。

 

 天然資源の罠を打破する

 

 多くの底辺の10億人諸国では資源は豊富だが政策が貧弱である。

 これらの国では援助によってより多くの資金を供給することは、ほとんど意味を持たない。

 天然資源の富によって国は紛争に駆り立てられかねず、これに対する介入の主要な手段としては、私達の法と国際的な規範だろう。天然資源のための憲章である。

 

 内陸国にとってのライフライン

 

 劣悪な近隣諸国に包囲された内陸国の罠を打破できるような強力な手段はない。

 そして内陸国の罠を打ち破るには、まず他の罠を壊さなければならない。ただし問題を低減するためであれば、私達にできることはまだ多くある。

 まず援助であり、しかも大規模な援助である。これらの国の貧困はまだ長く続くだろう。

 私達の貿易政策は内陸国の開発にはそれほど大きな影響力をもたない。なぜなら輸送コストという自然の障害があるためである。

 しかしヨーロッパに近いため、貨物の空輸がヨーロッパ市場へのライフラインとなりうる。

 主要な輸出品目は価値の高い農作物であり、この場合にはヨーロッパの貿易政策が関係してくる。

 

 失敗国家における改革の難局を打破する

 

 劣悪なガバナンスと政策の国でも時には方向転換の兆しをみせることはあるが、これらの国の改革は内部から行われなければならないが、それには勇気がいる。

 改革者は容易ではない。改革は困難だが勝利をおさめることはできるのだ。

 著者は7章で、いつ援助が改革を助け、どんな時に改革を妨害するかを指摘した。懸命な援助を行うには、技術協力の実施を実質的に改めることが必要である。

 法と国際的な規範についてはどうだろうか。私達の法律は腐敗を抑制する上で重要である。

 また国際憲章は改革者たちに劣悪なガバナンスを避難する手段を提供し、結束する目標を提供する。

 

 援助を改革する上で重大な障害は世論である。援助の支持者は成長に疑念を持ち、成長の支持者は援助に疑念を持つ。

 現在、人気を得ている考え方は、援助機関に対して逆の方向に向かって圧力をかけている。 

 いわく援助機関に失敗は許されない。いわく援助機関は管理費を節約してスリムにならなければならない。

 いわく改革と成長を目指して、短期よりも長期の目標を優先しなければならない。

 いわく無条件の債務援助を与えなければならない。

 一般市民が十分な情報を得ようとはせず、ただひたすら声高な要求と圧力を支持するのは誤りである。

 援助機関には多くの優れたスタッフがいるが、彼らは世論のあり方に強く縛られてもいるのだ。

 

 

  • まとめ

 

 この本の多くは先進国の援助する側の政府・NPO関係者に書かれたものでありますが、同時にその政治制度の根幹をなす我々に向けての心構えでもあります。

 国内の貧困・格差への目線と同時に、世界のそれへの目線も忘れないようにしたいと思います。